人工言語 > 文法書 > 5 代 4 期5 代 4 期

初めに

1適用日

5 代 4 期シャレイア語の文法は、 ハイリア暦 1504 年 6 月 27 日 (グレゴリオ暦 2015 年 8 月 1 日) 以降より適用される。 それ以前に書かれたシャレイア語の文章は、 古い文法に則って書かれているため、 現行の文法で解釈することはできないので注意すること。

2表記上の注意

この文書では、 Web ページであるという都合上、 全てのシャレイア語がラテン文字転写で記されている。 そのため、 読者の混乱を避ける目的で、 本文にセリフ体 (明朝体) を用いて、 シャレイア語の文や単語に対してはサンセリフ体 (ゴシック体) を用いた。

3読む際の注意

シャレイア語の文法を確認するときに便利なように、 文法事項は項目別にまとめてある。 そのため、 難易度順もしくは学習者が学ぶべき順番で項目が並んでいるわけではない。

この文書はシャレイア語の文法を説明するものなので、 文構造に関わる語法を除いて細かい語法については説明していない。 また、 全て文語 (書き言葉) を基準に解説してある。 口語 (話し言葉) で特に語法が変わるものについては、 第 66 節第 67 節に別の項目として掲載した。

45 代 3 期との変更点

5 代 3 期からの主な変更点は、 比較表現と助接詞の扱い方である。 また、 動詞型不定詞の名詞用法の使い方が明文化された。 以下、 変更があった内容を列挙する。

文字

5アルファベット

シャレイア語は、 「シャレイア文字」 と呼ばれる 26 個のアルファベットを用いて表記される。 これらは全て表音文字であり、 1 つの文字に 1 つの音韻が対応している。 対応関係については、 第 9 節を参照のこと。

シャレイア文字はシャレイア語のための独自の文字なので、 Unicode などには当然収録されておらず、 コンピュータ上に入力したり表示したりするのが難しい。 そこで、 シャレイア文字にラテン文字を対応させた表記を用いることが多い。 これを 「ラテン文字転写」 と呼ぶ。 ラテン文字転写は、 シャレイア文字に慣れていない初学者でも文章を読みやすくするために用いられることもある。

シャレイア文字には小文字と大文字がある。 以下に、 小文字の一覧を示す。 表の中央がシャレイア文字の形を表し、 左上のラテン文字は転写を表す。

以下は、 シャレイア文字の大文字である。 大文字は、 見出しなど特別に装飾や強調が必要である場合に限り、 各単語の最初の 1 文字のみに対して用いる。 また、 文字の高さが揃っているために小文字に比べて可読性が高いので、 文字を小さく書く必要がある場合や、 標識のように文字が瞬時に判別されることが期待される場合は、 全ての文字を大文字にすることがある。 通常の文章では大文字が用いられることはなく、 文の先頭や固有名詞に対しても用いられない。

a, e, i, o, u の 5 つの文字については、 これらにサーカムフレックスのような形をしたダイアクリティカルマークを付した文字も使われる。 これらは、 転写でもサーカムフレックスを付して â, ê, î, ô, û と表記する。 また、 ae の 2 つについては、 上記に加えてアキュートアクセントのような形の記号がつけられることがあり、 これらも同様に á, é と転写する。 さらに、 a, e, o, u の 4 つについては、 さらにグレイヴアクセントのような記号を付した文字も使われ、 à, è, ò, ù で転写する。

6数字

シャレイア語では数を 10 進法を用いて数えるため、 数字は全部で以下に示す 10 個ある。 数の読み方や使い方については、 第 47 節第 48 節に記載してある。

数字にも大文字と小文字の区別があり、 数字の大文字は以下のような形をしている。

数を表記する際は、 dev il'6ben ic'12 のように数字を用いることもあれば、 dev il'aricben ic'atisetqec のように数の読みを綴ることもある。

7約物

シャレイア語では、 主に以下の約物を用いる。

これの約物は、 以下の表に示される用途で用いられる。

転写名称和名称用途
.dekデック文の終わりを示す
,tadekタデック文の区切りを示す
!vadekヴァデック強調の意味を込めて文の終わりを示す
?padekパデック疑問の意味を込めて文の終わりを示す
'nôkノーク省略を表す
ʻdikakディカック固有名詞であることを表す
-fêkフェーク合成語を作る
:kaltakカルタックデータの区切りを示す
fôhakフォーハック静寂や余韻を表す
[ ]rakutラクット会話文であることを明示する
" "vakutヴァクット引用や強調であることを明示する

デック, タデック, ヴァデック, パデックを手書きする場合、 点を左下に払ってコンマのように書くこともある。

タデックは文の区切りを示すが、 日本語の読点のように自由に置いて良いわけでなく、 第 42 節で述べる限定節の副詞的用法や、 第 43 節で述べる接続詞の使用時など、 限られた位置にしか置けない。 ノークは、 縮約形が使われたときに縮約された部分にそれを明示する目的で使われる。 縮約形については第 54 節に記す。 ディカックは、 単語の前に置くことでその単語が人名などの固有名詞であることを示す。 文中で固有名詞を用いるときは、 必ずディカックを置かなければならない。 フェークの詳しい使い方については第 56 節に、 カルタックについては第 55 節に記載されている。

日本語のカギカッコに相当する記号としてラクットとヴァクットがあるが、 前者は会話内容のみに使い、 それ以外の引用や強調の意味では後者を用いる。

8転写の代用表記

第 5 節で述べたように、 シャレイア文字の転写には âá のようなダイアクリティカルマークが付けられたラテン文字も用いる。 これらの文字が技術上どうしても入力できない場合は、 以下の表に示すような代用表記を用いることが許されている。

正式代用
â (U+00E2)aa
ê (U+00EA)ee
î (U+00EE)ii
ô (U+00F4)oo
û (U+00FB)uu
á (U+00E1)ai
é (U+00E9)ei
à (U+00E0)au
è (U+00F8)eu
ò (U+00F2)oa
ù (U+00F9)ua
ʻ (U+02BB)'

なお、 この代用表記はできるかぎり避けるべきであり、 技術上不可能でない場合は正式な転写を用いることが強く推奨される。

発音

9文字と音韻

シャレイア語では、 標準的に以下の子音が用いられる。 発音記号の左に書かれている文字は、 その音韻に対応する文字を表す。

l の発音は条件異音であり、 後ろに母音が伴っているときは /l/、 それ以外のときは /ɾ/ となる。 /ɴ/ については後述する。

母音は以下の通りである。

/ɪ/, /ʊ/, /ɐ/ は 第 10 節で述べる二重母音の 2 つ目の母音として表れ、 単独では現れることはない。

基本的には、 第 11 節で述べる音韻変化を除き、 上の表に記載されている文字と音韻の対応に従って読めば良い。 ただし少数の例外があり、 例えば kin の発音は /kiɴ/ であり、 この kin とその縮約形 'n にのみ /ɴ/ が出現する。 また、 音節末の h も例外で、 非常に弱い /ə/ と読まれるか、 もしくは全く読まれない。

10長母音, 二重母音

文字の上にサーカムフレックスを付した â, ê, î, ô, û は長母音を表し、 通常の母音の長さより少し長めに発音する。

また、 文字の上にアキュートアクセントやグレイヴアクセントを付した á, é, à, è, ò, ù については、 以下のような二重母音として発音される。 これらの二重母音は、 どれも全体で 1 つの音節を形成する。

母音発音
á/aɪ/
é/eɪ/
à/aʊ/
è/eʊ/
ò/ɔɐ/
ù/uɐ/

11連続母音の変化

以下に示す 8 種類の連続した母音が 1 つの単語内に出てきた場合、 1 文字目と 2 文字目の間に半母音が挿入されて読まれることがある。 これらは外国語から借用された単語に見られる。

母音発音
ia/ija/
ie/ije/
io/ijɔ/
iu/iju/

1 つの単語内ではなく 2 つの単語間で母音が連続した場合、 すなわち母音で終わる単語の次に母音で始まる単語が置かれた場合、 母音の衝突を避けるために母音の間に /t/ が挿入される。 ただし、 単語間で母音が連続した場合の 2 つ目の単語が固有名詞の場合は、 /t/ が挿入されることはない。

12音節構造

シャレイア語の音節は、 V, CV, VC, CVC の 4 種類のみで、 1 つの音節で子音が 2 つ以上連続することはない。 長母音と二重母音は 1 つの母音として考えるが、 それ以外の母音の連続は別々の音節になる。

外国語から単語を借用したときに 1 つの音節内に連続した子音があった場合は、 適宜 e を挿入することで音節が分けられる。

13アクセント

シャレイア語のアクセントは強勢アクセントで、 高低アクセントはない。 アクセントは活用接辞を取り除いた語幹部分に置かれ、 語幹が 2 音節以下ならば最初の音節に含まれる母音に置かれ、 3 音節以上ならば最後から 3 番目の音節の母音に置かれる。

品詞

14品詞, 品詞用法

シャレイア語には、 動詞型不定詞, 名詞型不定詞, 機能詞, 助接詞, 連結詞, 間投詞の 6 種類の品詞があり、 1 つの単語にちょうど 1 つの品詞が割り当てられている。 1 つの単語が複数の品詞をもつことはない。 例えば yerif という単語は動詞型不定詞であるが、 同時に名詞型不定詞であるということはあり得ない。

一方、 シャレイア語の単語は、 同じ単語でも文中で役割を複数もつことがある。 この文中での役割を、 シャレイア語では 「品詞用法」 と呼んでいる。 品詞用法は、 動詞, 名詞, 形容詞, 副詞, 助接詞, 接続詞, 間投詞の 7 種類があり、 1 つの単語が複数の品詞用法で使われ得る。 例えば、 品詞区分では動詞型不定詞に分類される yerif は、 動詞, 名詞, 形容詞, 副詞の 4 種類の使い方ができる。

以下の表に示すように、 品詞ごとに可能な品詞用法は定まっている。 決められた品詞用法以外の使い方をすることはできない。

品詞品詞用法
動詞型不定詞動詞, 名詞, 形容詞, 副詞
名詞型不定詞名詞
副詞型不定詞副詞
機能詞副詞
助接詞助詞, 接続詞
連結詞接続詞
間投詞間投詞

ただし、 単語によって使われる品詞用法の頻度は異なる。 例えば、 動詞型不定詞 yerif は、 形容詞として用いられる場合が多く、 動詞として用いられることはめったにない。 一方で、 同じ動詞型不定詞の kût は、 動詞として用いられることが多く、 形容詞として用いられることはほぼない。

15飾詞

シャレイア語では、 他の単語の前や後について意味を変える役割をもつ、 いわゆる接頭辞や接尾辞を、 総称して 「飾詞」 と呼ぶ。 活用接頭辞や活用接尾辞は飾詞には含めない。 「飾詞」 という名前だが、 これは独立した単語ではないので品詞ではない。

活用

16動詞型不定詞の活用

動詞型不定詞は、 文中での用法などに応じて形を変える。 基本的には、 辞書の見出しとなる語幹部分に接頭辞や接尾辞をつけることで活用形が得られる。

動詞型不定詞が動詞として用いられた場合は、 語幹となる単語の後に 2 つの接尾辞をつけるという形で活用する。 1 つ目の接尾辞は時制を表し、 2 つ目は相と自他を表す。 時制を表す文字は以下の通りである。

時制
a現在時制
e過去時制
i未来時制
o通時時制

また、 相および自他を表す子音は以下の通りである。

相, 自他
f開始相, 自動詞
c経過相, 自動詞
k完了相, 自動詞
t継続相, 自動詞
p終了相, 自動詞
s無相, 自動詞
v開始相, 他動詞
q経過相, 他動詞
g完了相, 他動詞
d継続相, 他動詞
b終了相, 他動詞
z無相, 他動詞

例えば、 動詞型不定詞 sâf を動詞用法で用いるとき、 過去時制終了相自動詞ならば sâfep と活用する。

また、 動詞型不定詞が形容詞か副詞で用いられる場合は、 以下のような接頭辞を単語の前につける。 副詞として使われる場合は、 それが動詞を修飾する場合とそうでない場合とでつける接頭辞が変わる。

用法
a形容詞
o副詞

動詞の時制や相や自他が具体的にどのような意味になるかは、 第 31 節から第 33 節にかけてそれぞれ説明する。

17副詞型不定詞の活用

副詞型不定詞は副詞としてのみ用いられるが、 このとき活用接頭辞の e をつけて使われる。 すなわち、 副詞型不定詞は語幹部分のみで用いられることはない。

18助接詞の活用

助接詞には、 助詞として用いたときに、 辞書の見出し語として使われる語幹部分だけで用いることができるものと、 語幹部分だけでは用いられず常に活用接頭辞を伴って用いられるものの 2 種類がある。 このうち前者のタイプを 「一般助接詞」 と呼び、 後者のタイプを 「特殊助接詞」 という。

一般助接詞は語幹部分だけで用いると動詞を修飾する句を作るが、 活用接頭辞の i をつけることで動詞以外を修飾する句を作るものに変化する。 例えば te という助詞は、 te という形では動詞を修飾する助詞句を形成するが、 ite に変化すると名詞などの動詞以外を修飾するようになる。 語幹部分に i をつけた形は 「非動詞修飾形」 と呼ばれる。

特殊助接詞は、 助詞としては語幹を単独で用いることはせず、 必ず接頭辞の i がつけられた形で用いられる。

一般助接詞であっても特殊助接詞であっても、 接続詞として用いるときは語幹をそのまま用いる。

基本的な助詞の使い方は第 19 節第 20 節で述べ、 非動詞修飾形の助詞の詳しい使い方は第 35 節第 62 節で述べる。

なお、 ae の非動詞修飾形はそれぞれ iaie と書かれるが、 発音は /ita/ と /ite/ のように /t/ が挿入される。

基本文構造

19助詞 + 名詞

シャレイア語では、 名詞は必ず前に助詞が置かれた形で用いられ、 名詞が単独で現れることはない。 この助詞と名詞のまとまりを 「助詞句」 と呼ぶ。 もしくは、 使われている助詞を明示して 「a 句」 や 「te 句」 などと呼ぶこともある。

助詞は、 付随する名詞の格を表す。

上の例文には、 a tele yaf という 2 つの助詞句が用いられている。 助詞句 a tel に含まれる助詞 a は、 tel が主語として文中で用いられていることを明示していて、 e yafeyaf が目的語であることを示している。

名詞は必ず助詞を伴うが、 助詞とともに用いられるのが必ず名詞であるというわけではない。 特定の動詞を修飾する場合のみ、 助詞が形容詞に付随して用いられることがある。

ここでは、 形容詞 abig に助詞 e が伴われている。 このような例は、 上の例で出てきた sal の他にも nis などに見られる。

助詞には、 助詞句となって動詞を修飾するものと動詞以外を修飾するものの 2 種類があり、 前者を 「動詞修飾型助詞」 と呼び、 後者を 「非動詞修飾型助詞」 と呼ぶ。

上の例では、 非動詞修飾型助詞である i が、 i tel の形で名詞 nîl を修飾している。 また、 活用して非動詞修飾型助詞として用いられている ica は、 ica fêd の形で名詞 fîc を修飾している。

20動詞 + 助詞句

シャレイア語では、 基本的に動詞が文の先頭に置かれ、 その動詞を修飾する助詞句が動詞の後に並ぶ。

この例文では、 動詞 cates が文頭にあり、 その主語を表す助詞句 a tel が動詞の後に置かれ、 cates を修飾する形をとっている。

動詞を修飾する要素は複数であっても良い。 この場合、 修飾要素を順に並べる。

この文では、 文頭の動詞 feges を、 主語を表す a tel, 目的語を表す e dezet, 場所を表す vo vosis afik の 3 つの要素が後ろから修飾している。 このとき、 複数の修飾要素の順番は自由である。 すなわち、 この文を feges vo vosis afik a tel e dezet と書くこともできる。 しかし、 第 22 節で説明するように、 文法上では助詞句の順番は自由だが、 最初にどの語句が置かれるかでニュアンスが変わるので、 注意が必要である。

21形容詞, 副詞

動詞を修飾する語句が、 修飾される語である動詞の後に置かれるように、 シャレイア語では原則的に被修飾語の後に修飾語が置かれる。 この規則は、 名詞と形容詞に対しても適用される。 すなわち、 名詞の後にそれを修飾する形容詞が置かれる。

上の例文では、 nayef という名詞を azaf という形容詞が後ろから修飾している。 形容詞が複数ある場合は、 動詞を修飾する場合と同様に順に並べる。 ただし、 形容詞の順番によるニュアンスの違いはほとんど生じない。

この例では、 2 つの形容詞 axodol, ajôm が名詞 dev を修飾している。 このとき、 文の後半を e dev ajôm axodol としても良く、 ニュアンスもそれほど変わらない。 ただし、 第 64 節で述べる代詞の修飾形が用いられる場合、 これらは他の形容詞より後ろに置かれる。

この例文に含まれる afik は代詞の修飾形であるから、 形容詞の中で最後に置かれる。 この文の e 句を a nayef afik anav とするのは誤りである。

副詞が形容詞を修飾する場合も、 被修飾語の後に修飾語が置かれるという原則は守られ、 形容詞の後ろに副詞という語順になる。

この例文では、 名詞 xoq を形容詞 axokseq が後ろから修飾し、 その形容詞 axokseq を副詞 ebam がさらに後ろから修飾している。

副詞が動詞を修飾する場合は、 動詞と最初の助詞句の間もしくは文末に置かれる。 副詞を助詞句と助詞句の間に置くことは、 第 57 節で述べる挿入構文にしない限りできない。

上の例では、 副詞 omêl が動詞と最初の助詞句の間に入り、 動詞 vilises を後ろから修飾している。

22動詞修飾助詞句の語順

第 20 節で、 助詞句の順番が自由であることを説明した。 しかし、 実際に助詞句が並べられる順番にはある程度の規則がある。

シャレイア語では文末に焦点が当てられ、 文頭が話題を表し、 文末がそれに対する情報を表す。 そのため、 これまでの文脈ですでに述べられている話題が文頭になり、 まだ述べていない新情報が文末になるように、 助詞句が並べられる。

この 1 文目が書かれる時点では、 事前に他の情報がない。 このような場合、 主語がたいてい最初に置かれる。 そして、 文末で zeqil という情報を読者に与える。 これによって読者の頭に 「机を売った」 という情報が残るので、 2 文目の最初の助詞句を e cit にすることで、 読者は 「さっきの売った机のことだ」 とすんなりと理解できる。 さらに、 この文の最後の助詞句を a refet にすることで、 「さっきの机」 に対し 「友達からもらった」 という新しい情報が読者の頭に入っていく。

さて、 この例文の 2 文目の助詞句を入れ替える。

このようにすると、 1 文目で 「机」 というのが読者の頭にあるところに、 突然 「友達」 という情報が新しく入り、 読者は 「さっきの机はどうなったのか」 と混乱してしまう。 読者は、 2 文目の最後まで読んでようやく、 「この文はさっきの机のことについて書いてあったのだ」 と気づくことができる。 こうなると、 読者も理解がしにくい。 以上のように、 読者にすんなりと情報が入るように助詞句が並べられる。

否定表現

23普通否定文

否定文は、 肯定文の動詞のすぐ前に副詞 du をつけることで作ることができる。 これを 「否定副詞」 と呼ぶ。 疑問副詞 pa と同時に使う場合は、 pa du の順で動詞の前に置く。 修飾要素が非修飾語の前に置かれるという意味では、 この du は特殊である。

この副詞 du は、 動詞以外にも形容詞や副詞も否定することができる。

この例では、 形容詞 ahál が否定され、 「かわいくない」 の意味になっている。

否定副詞 du が名詞を修飾すると、 「~ではない他のもの」 の意味になる。

この場合、 動詞を否定するのではなく名詞の tific を否定することで、 「子供ではない何かである」 すなわち 「大人だ」 ということを暗に主張している。

24部分否定, 全部否定

否定副詞 du は、 直後の 1 語のみを否定する。 これを利用すると全部否定と部分否定の文を作ることができる。

普通に動詞の前に否定副詞を置くと、 全部否定の文になる。

この文では、 dudéxat だけを否定し、 du déxat で 「寝ていない」 という 1 つの塊を作っている。 その 「寝ていない」 に 「いつも」 の意味の ovák がかかるので、 「いつも寝ていない」 もしくは 「いつも起きている」 という全部否定の文ができる。

一方、 「全て」 や 「無」 を意味するような単語に否定の du がかかり、 さらに動詞にも du がかかっていると、 部分否定の文になる。

この場合、 2 つ目の duovák だけを否定し、 du ovák で 「いつもでない」 すなわち 「ごく稀に」 という意味の塊を作る。 これを du déxat という 「寝ていない」 という塊を修飾し、 全体で 「ごく稀に寝ていない」 つまり 「いつも寝ているというわけではない」 の意味になる。

このような構造で部分否定の文を作る形には、 以下のようなものがある。

構造意味
du ~ du aves全て~するわけではない
du ~ du okôt必ずしも~するわけではない
du ~ du ovákいつも~するわけではない
du ~ du ovop再び~することはない

なお、 du lesos e kin ~ とすることで kin 節全体を否定することができるので、 これを用いて部分否定の文をつくることもできる。

上の例文では、 kin 節の 「彼はいつも寝ている」 という内容全体が否定されるので、 「いつも寝ているわけではない」 という部分否定の文になる。

25否定相当語

シャレイア語には、 否定副詞を伴わなくても否定の意味になる語がいくつかある。 このような語を 「否定相当語」 という。 その例として dus は、 「0 人の人が~する」 すなわち 「誰も~しない」 という意味であり、 英語の nobody に相当する。

このような無を表す語のいくつかは、 否定副詞 + 名詞でも同じ意味を出すことができる。

無を表す否定相当語には以下のようなものがある。 使われる品詞用法が決まっているので、 それも併記する。

意味用法
dus誰も~しない名詞
dat何も~しない名詞
dolどんなことも~しない名詞
dûdどこも~しない名詞
dakどんな~も~しない形容詞
dûg決して~しない副詞
dum全く~しない副詞

なお、 上記の表の初めの 5 語は、 第 64 節で説明する代詞の一種である。 これは、 すでに述べたように否定副詞と任意を表す代詞で言い換えることができる。

26二重否定

第 25 節で説明されている否定相当語と否定副詞を同時に用いる、 すなわち二重否定の文を作ると、 強い肯定を表すようになる。

この文では、 「0 個のことが重要でない」 ということから 「全て重要である」 という意味になっている。 二重否定を使わずに salat a zel aves e asokes と表現するよりも、 この文の方が強く主張することができる。

疑問表現

27諾否疑問文

諾否疑問文、 すなわち 「はい」 または 「いいえ」 で答えるような真偽を問う疑問文は、 真偽を問いたい内容を書いた文の動詞の直前に pa をつけることで作ることができる。 これを 「疑問副詞」 と呼ぶ。 否定副詞の du と併用するときは、 pa du の順で動詞の前に置く。 また、 疑問文にするときは、 文末のデックをパデックに変える。 その他の語順の変化はない。

疑問文を読むときには、 文末を上昇気味に読む。

諾否疑問文に答えるときは、 yadu を用いる。 どちらも第 64 節で述べる間投詞である。 ya は聞かれた内容が正しいとき、 du は聞かれた内容が誤りのときに使う。

yadu の使い方については、 疑問内容が否定文になっているときに特に注意が必要である。 疑問文から pa を取り除いた文が正しければ ya、 正しくなければ du を使うので、 英語の yes, no とは異なる使い方である。

この例文では、 pa を除いた文が 「あなたは犬が好きではない」 という意味になるので、 ya と答えた人は犬が嫌いである。

28疑問詞疑問文

疑問詞を用いた疑問文は、 尋ねたい部分を適切な疑問詞に変え、 諾否疑問文と同様に動詞の前に pa をつけ加えるだけで作ることができる。 このとき、 疑問詞を含む助詞句は文末か文末に近い位置に置かれることが多い。 さらに、 諾否疑問文と同様に、 文末のデックをパデックに変え、 読むときは語末を上昇させる。

以下に主要な疑問詞を挙げる。 これらは使われる品詞用法が決まっているので、 それも同時に示しておく。

意味用法
pas名詞
pet名詞
pilどんなこと名詞
pâdどこ名詞
pekどんな形容詞
péfどのような, どのように形容詞, 副詞

上の表にない疑問詞は、 助詞と疑問詞を組み合わせることで作ることができる。 例えば、 理由を表す助詞 vade と疑問詞 pil を組み合わせることで、 「どんなことの理由で」 すなわち 「なぜ」 という意味ができる。

このような方法で作ることができる疑問詞句は、 以下のようなものがある。

助詞句意味
te petいつ
vade pilなぜ
qi pilどうやって

疑問詞疑問文に答える場合は、 答えが名詞ならば助詞 + 名詞の形で答える。

疑問詞が pil のときは、 たいてい名詞節が回答となる。 この場合、 助詞 + kin + 節の形で答える。

形容詞の疑問詞が用いられている場合、 答えは形容詞となる。 この場合は、 助詞 + 名詞 + 形容詞の形で答える。 形容詞だけを答えることはできない。

29選択疑問文

複数の選択肢の中から回答するような選択疑問文を作るには、 疑問詞疑問文をまず作り、 助詞 ive を用いて選択肢を明示すれば良い。 ive 句は疑問詞を修飾するので、 疑問詞の直後に置く。 また、 選択肢と選択肢は接続詞 o でつなぐ。 選択肢が 3 つ以上ある場合も、 それぞれの選択肢の間に o を入れる。 シャレイア語には 「どれ」 や 「どちら」 に当たる単語はないので、 代わりに pas, pet, pil を用いる。

他の方法に、 「または」 を意味する接続詞 á を用いて、 2 つ以上の文をつなげる方法がある。 á の後の文にも疑問副詞の pa は必要なので注意すること。

この文には繰り返しがあり冗長であるため、 以下のように共通部分が省略されるのが普通である。

後半の節で前半と共通する e ahap emic が省略され、 代動詞の l が用いられている。 この省略法については、 第 53 節で詳しく説明する。

なお、 これでもまだ冗長なので、 文を 1 つにまとめて以下のようになることもある。

さて、 選択疑問文のもう 1 つの形として、 肯定か否定かを選ばせる 「~なのかそうでないのか」 という意味のものがある。 これを作るには、 単純に肯定疑問文と否定疑問文を、 接続詞の á でつなげば良い。

これも冗長なので、 共通部分が後半の節から省略され、 以下の形になる。

もしくは、 後半の du lat の部分を前半の動詞の直後に移動させ、 以下のような形にもなる。 前半の文が長い場合はこちらの方が好まれる。

30間接疑問

疑問詞疑問文や選択疑問文が文の一部となる場合は、 普通の疑問文から疑問副詞の pa を取り除いた形をそのまま使うだけで良い。

例えば、 以下のような疑問文があるとする。

この疑問文を他の文の一部として扱いたい場合は、 pa を取り除いた文を用いて以下のようにする。 ただし、 疑問文ではなくなるので、 文末はパデックではなくデックにする。

ここで出てくる接続詞の kin については、 第 46 節で詳しく解説する。

諾否疑問文が文の一部となる場合は少し異なる。 例として、 以下の疑問文を使って間接疑問表現を作ることにする。

まずは、 これを第 29 節で説明した、 接続詞 á を用いた 「~なのかそうでないのか」 という表現に書き換える。

この疑問文を、 すでに述べた間接疑問表現の作り方と同様にして文の一部にすれば良い。 このとき、 2 つある疑問副詞 pa は両方取り除く。

動詞の用法

31時制

シャレイア語の時制には、 現在時制, 過去時制, 未来時制, 通時時制の 4 種類がある。

現在時制は、 現在のちょうどそのときに起こっていることを表現するときに用いる。

過去時制は、 過去に起こった出来事について表現するときに用いる。 過去時制で表現された内容は、 現在との関係はもたない。

この例の場合、 過去時制が用いられているので、 ただ過去のある時点で紙が破られたことのみを意味し、 現在の時点でその紙が破られたままなのか、 それとも修復されているのかは分からない。 一方で、 現在時制の継続相を用いて動詞を zedotat とすれば、 その紙が破られて現在もそのままであるという意味になる。

未来時制は、 未来に起こるであろう出来事についての表現である。 ただし、 英語の will とは違い、 意志の意味はない。

通時時制は、 時間に関わらず不変の事実を表現するときに用いる。

また、 相対的に長い時間の間で不変の事実であれば、 通時時制が用いられる。 例えば、 「彼はシャレイア語が話せる」 という事実は、 彼が死んでしまえばもちろん否定されてしまうが、 彼が生きているという長い時間では変わらない事実なので、 通時時制で表現できる。

また、 通時時制は、 時間に関係なくただ行為のみを表す場合にも使われる。

この例では、 「花を見る」 というのは現在のことや過去のことを指しているのではなく、 「花を見る」 という行為そのものを表すので、 通時時制が用いられる。

32

シャレイア語の相には、 開始相, 経過相, 完了相, 継続相, 終了相, 無相の 6 種類がある。 このうち、 開始相, 完了相, 終了相の 3 つは時間上のある 1 点を表し、 これらを総称して 「瞬間相」 と言うこともある。 経過相, 継続相は長さのある一定期間を表し、 これらを総称して 「期間相」 と呼ぶこともある。

まず、 瞬間相について見ていく。 開始相は、 行為が始まる瞬間を表す。

この例では、 現在という時点が 「本を読む」 という行為が始まった瞬間であることを述べている。

完了相は、 行為が完了した瞬間を表す。

終了相は、 行為が完了したときの状態が続かなくなった瞬間を表す。

次に、 期間相を見ていく。 経過相は、 動作が始まった瞬間から完了する瞬間までの間、 すなわち開始相から完了相までの時間を表す。

継続相は、 行為が完了する瞬間からそれ以降の状態が終わる瞬間までを表す。 すなわち、 完了相から終了相までの間である。

無相は少し特殊な相であり、 これは開始相から完了相までの一連の行為を表す。

また、 動作の局面を特に指定せず、 動詞が表す動作そのものを表現したい場合にも無相を用いる。 これは、 第 31 節で説明した、 特に時間を指定しないときに通時時制を用いるのと同じような用法である。

以上の相を 「座る」 という動詞でまとめてみると、 以下のようになる。 「座る」 を開始相で用いると、 座ろうとして足を曲げ始めた瞬間を指すことになる。 また、 経過相は足を曲げ始めて尻が椅子などにつくまでの間を指し、 完了相は尻が椅子についた瞬間を表す。 継続相は、 動作をした後の状態が継続している期間なので、 尻が椅子についている間を表し、 終了相は尻が椅子から離れた瞬間を指す。 無相は、 足を曲げる瞬間から尻が椅子につくまでの期間を表すか、 もしくは 「座る」 という行為の完成度を言及せずに行為そのものだけを表す。

なお、 他の一部の言語で相として扱われる反復は、 シャレイア語では相として扱わない。 これの表現方法については第 36 節で個別に説明する。

33自他

行為には、 自分自身だけで行うことが可能なものと、 他者がある行為をするのを手助けさせるという意味のものの 2 種類がある。 シャレイア語では、 前者の行為を表す動詞を 「自動詞」、 後者の行為を表す動詞を 「他動詞」 という。 例えば、 「着る」 は自動詞で 「着せる」 は他動詞である。

シャレイア語における自動詞と他動詞は、 目的語の有無に注目したときの自動詞と他動詞とは、 全く異なる概念なので注意すること。 また、 他動詞と使役も区別される。 すなわち、 他動詞は 「相手が行為をする手助けをする」 ということを表すが、 使役表現は 「相手に行為をさせるだけで手助けをしない」 ことを表す。 これは、 日本語の 「着せる」 と 「着させる」 の違いと同じである。

シャレイア語は、 自動詞と他動詞に同じ単語を用い、 自動詞か他動詞かの区別は活用で行う。 活用は第 16 節を参照のこと。

他動詞の相手は li 句により表す。

動詞の特殊構文

34動詞の助動詞的用法

kin 節句をとることができる動詞のうち一部は、 kin と助詞を省くことができる。 これを 「動詞の助動詞的用法」 と呼ぶ。

助動詞的用法の典型例として、 可能表現を挙げて説明する。 可能には 「~できるようになる」 という意味の動詞 kil を用いるのだが、 普通に文を作ると以下のようになる。

主節の動詞を修飾する助詞句が kin 節句以外に 1 つしかなく、 その助詞句と同じものが kin 節の動詞にも付随している場合、 もしくは主節に kin 節句以外の助詞句がない場合、 以下のように主節の助詞句と kin を省略できる。 このとき、 消された助詞句と同じ kin 節内の助詞句は、 動詞の直後に移動する傾向がある。

以下のような主節の動詞に kin 節句を除く助詞句が 2 つ以上ある場合は、 助動詞的用法の形にはできない。

命令表現もこの方法を用いる。 シャレイア語では動詞に命令を意味を込めることはできず、 「~しろ」 という意味の動詞 dit を用いて命令の意味を出す。 このとき、 dit は現在時制の継続相の自動詞として用いる。 また、 命令対象を省略することはできない。

しかし、 これでもまだ冗長であるため、 ditatdi' に縮約されることがある。 さらに、 口語では ditat そのものがそもそも省略されてしまう場合もある。 これについては第 67 節で詳しく述べる。

なお、 助動詞的用法をとれる動詞は限られており、 条件を満たしたからといって、 必ず助動詞的用法にできるわけではない。 この用法をとれる動詞としては、 kil, qif, raf, doz, vom などがある。

35動詞型不定詞の名詞用法

動詞型不定詞を一切活用させないそのままの形は、 「~すること」 という意味の名詞として用いることができる。 すなわち、 いわゆる動名詞である。

動詞型不定詞の名詞用法を用いることで、 kin 節を kin を使わない名詞句で置き換えることができる。 以下の文を例にとって説明する。

この文では、 kin 節内に動詞型不定詞 foles の動詞形 folesos が用いられている。 これを名詞用法の foles に変え、 もともとの動詞に付随していた助詞句の助詞を非動詞修飾形に変えれば、 名詞用法を用いた同じ意味の文を作ることができる。 このとき、 telves などの明らかな要素を含む助詞句は省略されやすい。

なお、 この名詞用法を用いる表現が使われる頻度はそれほど高くなく、 名詞用法を修飾する助詞句が多いときはむしろ避けられる傾向がある。

36反復表現

動作の反復を表すには、 「繰り返す」 という意味の動詞 vom を用いる。 この vom は、 第 34 節に述べた助動詞的用法で用いられることが多い。 反復の開始, 継続, 完了は、 それぞれ vom を開始相, 経過相, 完了相で用いることで表現できる。

反復の完了と完了相は意味が異なるので注意すること。 上の例文は反復表現なので、 「本を読み終える」 という行為を何回か繰り返すうちの最後の 1 回が完了したことを表すが、 完了相で lîdak a tel ~ とすると、 本を読むという 1 回の行為が完了したことを表す。 前者の表現では本を最後まで読み切ったというニュアンスが含まれるが、 後者の表現は単に 1 回の動作の完了だけを表すので、 本を読み切ったどうかは定かではない。

習慣も一種の反復なので、 反復表現で表す。 現在でも続いている習慣は、 vom を現在時制の経過相を用いて表現する。 過去に続いていた習慣も同様に、 vom を過去時制の経過相で使う。

受動表現

37受動相当表現

シャレイア語は、 能動態と受動態を区別して表現しない。 これは、 能動態と受動態というのが、 主語か目的語かのどちらが話題となっているかが異なるだけであると考えられるからである。 第 22 節で述べたように、 シャレイア語では助詞句の順番を入れ替えることで話題を明示できるので、 受動態と能動態を異なる構文にする必要がないのである。

この例では、 目的語の e 句が話題となり、 受動態のような表現になっている。

なお、 シャレイア語では特別な表現ではないが、 このような表現を他の受動態のある言語と比較して 「受動相当表現」 と呼ぶことがある。

比較表現

38優劣表現

2 つのものを比較して優劣を表現したい場合は、 「より」 を意味する副詞 emic と 「~と比べて」 を意味する接続詞 ni を用いる。

比較表現の作り方は以下の通りである。 まず、 比較対象を除いた文を作る。

次に、 比較対象について言及した文を作る。 このとき、 最初に作った文と文の構造を同じにする。

最後に、 比較対象についての文に接続詞 ni をつけ、 最初の文につなげる。 このとき、 最初の文の比較内容を表す形容詞や副詞の後に、 「より」 を意味する mic をつける。 mic は副詞として用い、 比較内容を表す単語の直後に置く。

これでは繰り返しがあり冗長なので、 共通部分は ni 節内から省略される。 ただし、 動詞を省略することはできないので、 代動詞の l を用いている点に注意すること。 代動詞については第 53 節で説明する。

上の例のように比較対象が名詞 1 つでも十分伝わる場合は、 ni を非動詞修飾形の ini に変え、 その後に名詞を続けても良い。 このとき、 ini 句は emic の直後に移動される。

比較対象とどの程度異なるかを表すには、 助詞の ile を用いる。 これは助詞 le の非動詞修飾形である。

倍数表現も比較表現を用い、 倍数は ile 句で表現する。

ni 節もしくは ini 句は省略することができる。 この場合、 平均より優れているなどといった漠然とした比較を表す。

この文は、 他に存在する様々な問題に比べて比較的単純であることを意味する。

さて、 ここまでの比較表現は比較対象が ini 句で表現できていたが、 ini 句に置き換えられない場合も当然ある。 1 つの例を挙げる。 まず、 以下の文がある。

比較対象に関する文として以下がある。

この 2 つの文を比較表現にしてつなぎ合わせると、 以下のようになる。

共通部分を省略して、 最終的には以下の表現になる。

英語の less を用いる比較表現のような 「より~ではない」 を表したい場合は、 mic の代わりに domic を用いる。

39同等表現

2 つのものを比較して程度がだいたい同じであることを表現する文は、 比較表現とほぼ同じような作り方で作ることができる。 「同じくらい~」 という意味を出すには、 副詞 evêl を用いる。

作り方を説明する。 まず、 比較対象を除いた文を作る。

次に、 比較対象についての文を、 最初の文と構造が同じになるように作る。

最後に、 比較対象に関する文に接続詞 ni をつけ、 最初の文につなげる。 対象内容を表す単語には、 後ろに 「同じくらい~」 という意味の vêl をつける。

繰り返しが冗長なので、 ni 節内が省略されたり、 ini 句に置き換えられたりして、 以下のようになる。

上記の ini 句を使う方法とは別に、 比較するものを接続詞 o で並べて表現する方法もある。

ini 句を用いる 1 つ前の例文では、 主節にある qos のみが話題となるが、 o で並べる方法をとった上の例文では、 qosfakrêy i tel の両方が話題になっている。 この点で 2 つの表現はニュアンスが異なる。

40最上表現

ある範囲の中で比較してあるものが最も優等であることを表現する場合は、 「最も~」 を意味する副詞 ehiv と 「~の中で」 を意味する助詞 ive を用いる。

作り方は以下の通りである。 まず、 比較するグループなどを排除した普通の文を作る。

そして次に、 比較内容を表す形容詞や副詞に 「最も~」 を意味する hiv をつけ、 比較範囲を ive 句で表現する。 ive 句は ehiv の直後に置かれる。

比較範囲内の順位を表す場合も最上表現を用いる。 順位は ile 句を用いて表現する。

また、 上の例のように比較する範囲を表す ive 句は省略ができる。 省略された場合、 文脈などで比較範囲が想定される。

最も優等であることとは逆に、 最も劣等であることを表現するには、 hiv の代わりに dohiv を用いる。 これは英語の least に相当する。 使い方は domic と全く同じである。

限定表現

41限定表現

2 つの文を、 片方の文がもう片方の文の名詞を修飾する形で 1 つの文にすることができる。 これをシャレイア語では 「限定表現」 と呼ぶ。

例を挙げてそのような文の作り方を示す。 まず、 以下の前提文がある。

この文の qazek を修飾する節として、 以下の文を考える。

2 文目の ces が 1 文目の qazek を表しているとすれば、 この 2 つの文をまとめて 「あの人は私が昨日会った男性」 という意味を出すことができる。 そのためには、 まず修飾する方の 2 つ目の文で、 被修飾語と同じ意味の名詞を消す。 すると、 名詞が伴わない単独の助詞が出現するが、 これを動詞のすぐ後に移動させる。 そして、 その単語を消した修飾する文を、 被修飾語のすぐ後に置く。 このとき、 名詞を修飾している方の節は 「限定節」 と呼ばれる。

以下のように、 消された名詞に伴っていた助詞が名詞を修飾していた場合、 その助詞だけの位置を変えると意味が変化してしまうので、 修飾している名詞を含む動詞修飾の助詞句全体を動詞の直後に移動させる。

上の例では、 i のみを移動して salot i a qâz としてしまうと i が修飾するものが分からなくなってしまうので、 a qâz i 全体を動詞の直後に移動させている。

限定節が修飾する名詞が別の形容詞でも修飾されている場合は限定節が後ろに置かれ、 名詞 + 形容詞 + 限定節の順になる。

この例では、 zeqilavaf ebam という形容詞と séqes 以下の限定節の 2 つが修飾している。

限定節内の時制は、 主節の表す時制に対する相対的な時を表す。 例えば、 主節が過去時制で限定節が現在時制ならば、 限定節は過去における現在を表すので、 過去に起こった出来事であるということになる。

42限定節の非限定用法

限定節は基本的に修飾している名詞を限定する。 すなわち、 qazek câses e a tel では、 示す幅が広い 「男性」 という名詞が限定節によって限定され、 「私が会った男性」 に意味が狭められている。 一方で、 限定節の初めの動詞の前にタデックを打つことで、 修飾する名詞の意味を狭めずに情報を補足することができる。 これを 「限定節の非限定用法」 という。

非限定用法で用いられた限定節の後にさらに助詞句が続く場合は、 限定節の終わりの位置にもタデックが必要になる。

この限定節の非限定用法は、 修飾される名詞が fikcik などですでに 1 つに限定されていたり、 固有名詞で初めから 1 つしか存在しないものだったりするときによく出現する。

接続詞

43連結詞

シャレイア語の連結詞は o, é, á, à の 4 つのみで、 これらは 2 つの語句や節を対等な関係で結ぶ。 そのため、 つながれている語句や文を入れ替えても意味は変化しない。 これら 4 つの連結詞には、 それぞれ lo, , , という別形が存在し、 別形の方は節と節を結ぶときだけ使われる。

連結詞が語句をつなぐ場合は、 つなげたい語の間に接続詞を入れれば良い。

上の例のように名詞だけでなく、 形容詞や動詞などの様々な語句をつなげることができる。

連結詞で 2 つの文をつなげる場合は、 文の前に連結詞をつけ、 さらに節と節の間にタデックを打つ。 接続詞節が短い場合など、 このタデックは任意に省略できる。

44助接詞

助接詞は助詞と接続詞の両方の品詞用法を持つが、 助詞としての使い方は第 19 節第 20 節などで述べた通りである。 ここでは接続詞としての使い方について説明する。

基本的な接続詞としての使い方は、 節をつなげる連結詞と同じである。 すなわち、 片方の文の前に助接詞をつけ、 さらに節と節の間にタデックを打つ。 接続詞として使われた助節詞がある方の節を 「接続詞節」 という。

連結詞のときとは違い、 接続詞節全体を主節の前に移動させることもできる。

なお、 接続詞節の時制は、 関係節のときのように相対的に決まるわけではない。 すなわち、 主節の時制が何であっても、 接続詞節が過去時制ならば過去を表し、 未来時制ならば未来を表す。

45接続詞の副詞的用法

節を接続する接続詞の働きは 2 つの節を 1 つの文にまとめることだが、 2 つの文の意味上のつながりを意味するだけの場合もある。 これを 「接続詞の副詞的用法」 という。 このように使う場合は、 接続詞として用いられている連結詞や助接詞のすぐ後に必ずタデックを打つ。

上の例では、 文が途中で途切れているので、 接続詞 vade は節をつなげているわけではない。 しかし、 結果と原因という、 前の文と後の文の意味上のつながりは表している。 副詞的に用いられた接続詞のすぐ後ろのタデックを取り除き、 その前の文の最後にあるデックをタデックに変えれば、 通常の接続詞の用法で 2 つの節が結ばれた文ができる。

46接続詞 kin

少し特殊な接続詞として kin というものがある。 これは 「~ということ」 もしくは 「~という状態」 という意味で、 節を名詞化する働きをもつ。 英語でいう to 不定詞, that 節, wh 疑問詞節の役割を全て担う。 この名詞化された節は 「kin 節」 と呼び、 kin 節が付随する助詞句を 「kin 節句」 と呼ぶ。

上の例文では、 feraces 以下の節が名詞化され、 a 句の要素となっている。

kin 節の内容全体を形容詞で修飾したい場合は、 その形容詞を kin の直後に置く。

上の文で atutyapelos の直後に置くと、 atutkin 節全体ではなく yapelos を修飾してしまうので、 意味が 「歌を歌うだけで気分が良くなる」 に変わってしまう。

kin を用いて間接疑問の表現も構成できるが、 これは第 30 節で説明した。

kin は接続詞だが、 他の接続詞と異なり 2 つの要素をつなぐ役割はない。 kin 節内の時制は限定節と同じように、 主節の時制と相対的に決まる。

数詞

47

シャレイア語では、 数は 10 進法によって数える。 0 から 9 までの数の読み方については、 以下の表に示す通りである。

単語
nof0
tis1
qec2
yos3
piv4
xal5
ric6
sez7
kaq8
von9

数が 4 桁以下の場合は、 上に示した 1 桁分の数字の後に以下に示す位取りの語をつけて読めば良い。 位が 0 であるものは読まない。

単語
et10
il100
as1000

例えば、 3487 は yosaspivilkazetseq と読む。

5 桁以上の場合は、 数を下の位から 4 桁ずつ区切って、 それぞれを 4 桁以下の場合と同様に読み、 区切りの位置に以下の位取りを表す語を入れる。 数の綴りを書くときは、 以下の単語の直後にフェークを入れることがある。

単語
otik1 万 (104)
oqek1 億 (108)
oyok1 兆 (1012)
opik1 京 (1016)
oxak1 垓 (1020)

例えば 517002 は xaletisotik-seqasqot と読むことになる。

以上のように、 日本語の数え方とよく似ている。 ただし、 日本語では 「五万一千」 や 「一百二十」 ではなく 「五万千」 や 「百二十」 と言い、 1 を省略することがあるが、 シャレイア語で tis は省略できない。 例えば、 10 は tiset で、 11101 は tisotik-tisastisiltis となる。

数を綴るとき、 同じ文字が 2 つ連続して出てきた場合は片方を取り除いて 1 つにする。 例えば、 2007 は qecassez ではなく qecasez で良い。 また、 大きな数を数字で書くときは、 数の大きさの判断をしやすくするために、 4 桁ずつ空白で区切って 51 7002 などと書くこともある。

48数詞の使い方

数詞は基本的に形容詞として用いる。 したがって、 文中では活用接頭辞の a がついた状態で現れる。 なお、 この活用した形も単に数字のみで表す。

基数は、 形容詞として活用した数詞の前に il' をつけることによって表現する。 これは ila lêk の縮約形だが、 強調などの特別な意味がない限り縮約する前の形を使うことはない。 形容詞として使うときも副詞として使うときも同じ形を用い、 名詞の後に置く。

序数は、 数詞の前に ic' をつけて表現する。 これは ila cav の縮約形だが、 基数の場合と同様に縮約しないこの形が用いられることは稀である。 使い方は基数と同じで、 名詞の後に置く。

49数詞の名詞形

第 48 節で述べたように、 基数や序数などを表すときに用いる数詞は形容詞である。 このような形容詞としての数詞は 第 47 節で述べた数の読み方に従って、 綴ったり読んだりすれば良い。

一方、 「3」 そのものを表したいときなど、 数詞を名詞として扱いたいときは数の読みが変わる。 具体的には、 最終音節に含まれる母音が aeia および ouo という規則に従って変化する。 例えば、 67 は形容詞としては ricetsez だが、 名詞としては ricetsiz となる。

50日時表現

日時の表現には序数を用いる。 このとき、 単位が小さい方から順に並べる。 例えば、 「4 月 17 日」 は taq ic'17 ben ic'4 と表し、 「8 時 12 分 72 秒」 は tît ic'72 meris ic'12 tef ic'8 と表す。 名詞が連続してしまうが、 この日時の表記のときに限って例外的に認められる。

なお、 序数を使わずに基数を用いると、 時刻ではなく時間を表すようになる。 すなわち ben ic'4ben il'4 はそれぞれ 「4 月」 と 「4 ヶ月」 を表す。

省略

51助詞句の省略

シャレイア語には、 動詞に対して必ず必要な助詞句というものはない。 したがって、 文法上では自由に助詞句を省略できる。 しかし、 主語などを表す a 句、 目的語を表す e 句、 また動詞が他動詞として用いられる場合はその主語を表す li 句は、 あまり積極的には省略されない。

明示されていない助詞句には、 第 64 節で説明する特定の意味の代詞があるものだとして解釈される。

この例文では、 主語を表す a 句が省略され、 殴った主体が明示されていない。 この場合、 読者は 「誰か特定の人に殴られたのだろうが言及していない」 と認識する。 別な言い方をすれば、 a kosa kut が省略されていると考える。

52繰り返しの省略

語句の繰り返しは冗長で、 シャレイア語では嫌われる。 そのため、 2 回目以降は繰り返し部分が省略される。 シャレイア語では動詞を省略することが原則的に許されていないため、 動詞を省略したい場合は代動詞の l を用いる。 また、 同じ単語が複数回出てきてしまう場合は、 2 回目以降を第 64 節で述べる同種の代詞に置き換えることで、 単語の重複を避けられる。 なお、 否定副詞は繰り返されていても省略できない。 代動詞 l については第 53 節を参照すること。

この例文は、 前半と後半の節に動詞 nises と助詞句 a hîx が共通して存在する。 そのため、 これらは以下のように省略される。

まず、 後半の節から a hîx が省略されて消え、 nises は代動詞を使って les となっている。

第 38 節および第 39 節で解説した比較表現と同等表現では、 接続詞 ini を用いて比較対象を表現するが、 この ini 節では例外的に動詞まで省略ができる。

53代動詞 l

動詞の繰り返しがある場合は、 2 回目以降の動詞を 「代動詞」 と呼ばれる l に置き換えることで、 繰り返しを回避できる。 この l は、 直前に出てきた動詞とそれを修飾する助詞句全体の代わりをする。

上の例では、 latkavat e monaf の代わりをしている。

54縮約形

一人称を表す tel や二人称を表す loc、 さらにすでに述べられた人や物を表す cescot は、 文中で頻繁に出てくることが多いため、 冗長になるのを防ぐために、 同じ節で 2 回目以降に出てきた場合それぞれ 'l, 'c, 's, 't に縮約されることが多い。 このとき、 付随する助詞と 'l, 'c, 's, 't の間のスペースはなくなる。 なお、 この縮約が用いられるのは、 1 つの節の中で 2 回目以降に出てきた場合のみであり、 1 回目のものは縮約されないので注意すること。 また、 a, e, li, ca, zi, i の 6 つの助詞の直後以外の位置で縮約されることは稀である。

また、 kin 節もよく使われるので、 'n という縮約形が使われる。 これは節の中の 1 回目の kin に対しても用いられる。

55日時の略記

日付や時刻の表現は、 数字だけをカルタックで区切る略記が用意されている。 このとき、 年は 4 桁に、 それ以外は 2 桁になるように、 桁が足りない場合は先頭に 0 がつけ足される。 第 50 節で述べたように、 シャレイア語では小さい単位から日時を述べるので、 日本で一般的に用いられる表記と数の順番が逆になるので注意すること。

上の例の 23:05 は 「5 時 23 分」 すなわち meris ic'23 tef ic'5 の略記であるが、 「5 月 23 日」 の taq ic'23 ben ic'5 の略記であるという可能性もある。 この略記法ではその区別はできず、 文脈で判断される。

この略記を読むときは、 カルタックで区切られた数を o でつなげて 1 つずつ読む。 例えば 23:05qecetyus o xel と読む。

56合成語化

形容詞節などで修飾されている名詞を示したいとき、 同じ語句を繰り返すのでは冗長であるが、 かといって cescit などの代詞にしてしまうと何を指しているのか曖昧になってしまうということがある。 この場合、 その名詞およびその修飾要素の中で最も重要と思われる単語をフェークでつなげて 1 語に合成し、 それを代名詞のように使うことができる。 例えば、 前の文に zas kilat lakos a qi qixaléh という名詞があったとして、 もう一度その人について何か言及したい場合、 zas と修飾要素の中の qixaléh を用いて zas-qixaléh として指すことができる。

修辞的な表現

57挿入

第 19 節で、 動詞を修飾する副詞は動詞の直後か文末に置くと説明したが、 それ以外に助詞句と助詞句の間にも置くこともできる。 ただし、 その場合は副詞の前後にタデックを打つ。 これを 「副詞の挿入」 と呼ぶ。

このように文中に副詞を用いた場合、 その副詞は動詞を補足的に説明しているというニュアンスになる。 例えば上の例文では、 「私はそこへ行くことがある」 という内容が主で、 それに対して 「ときどき」 という情報が付加されているという感じになる。

なお、 普通に副詞を文末に置いたときでも、 その直前にタデックを打つと、 副詞の挿入と同じような補足的な意味をもたせることができる。

58強調

通常動詞の後に置かれる動詞修飾の助詞句を、 動詞より前にもってきてその後にタデックを打つことで、 その助詞句を強調させることができる。

同様にして、 動詞修飾の副詞も強調できる。

動詞以外を修飾する副詞や形容詞は、 この方法で強調することはできない。

59詠嘆

s'e の後に形容詞や名詞を置くと感嘆表現になる。

ここで使われる s'esalat e の縮約形で、 この詠嘆表現のときだけ用いられる。

60反語

第 27 節から第 29 節にかけて疑問文について説明したが、 文末をパデックではなくデックにすると、 疑問内容の否定を表す反語表現になる。 読むときは文末を上昇気味にしない。

その他の特殊表現

61形容詞の非限定用法

形容詞は修飾する名詞を限定する働きをもつが、 形容詞の前後にタデックを打つことで、 名詞を限定する働きをなくすことができる。 形容詞が文末にある場合、 タデックは形容詞の前に打つだけで良い。 このとき、 この形容詞は名詞を補足的に説明していると捉えられる。 これは、 「形容詞の非限定用法」 と呼ばれ、 第 42 節で説明した限定節の非限定用法と意味の変化は同じである。

62限定節の別表現

一部の限定節は、 助接詞の非動詞修飾形を用いることで、 より簡潔な表現にすることができる。

例として、 以下のような文を考える。

このような限定節は、 動詞を省略し、 その動詞を修飾していた助詞句の助詞を非動詞修飾形にすることで、 限定節を用いない形にすることができる。

この表現は、 動詞を省略しても文意が曖昧にならないときに限り用いられる。 たいていの場合は、 qet が省略されたものとして認識され、 このとき用いられる助詞は ivo, ite, ifi, ide であることがほとんどである。

63区切りの明確化

長い限定節がついた名詞を伴う助詞句が文中に置かれたとき、 どこでその助詞句が終わるのか分かりにくくなることがある。

上の例では、 tiqat を修飾する lanes 以下の限定節が e vesax までなのか te tazik までなのか分からない。 もし e vesax で限定節が終わるならば、 その区切りを明確化するために、 区切られる部分にタデックが打たれることがある。

なお、 このタデックの利用は最低限にとどめられる傾向がある。 例えば上の文は、 te tazika tel の直後に移動させれば、 区切る必要がなくなる。 ただし、 もし te tazik が読者に新しく提示される情報であるならば、 第 22 節で説明したように文末にあることが望ましいので、 区切りを明確化するタデックが用いられやすい。

その他の重要語

64代詞

以下の表に示す単語を、 シャレイア語では総称して 「代詞」 と呼ぶ。 代詞には、 表で示されているように、 10 種類の意味と 5 種類の表す対象があり、 全部で 41 個ある。 なお、 「代詞」 という言葉は以下の単語の総称であり、 品詞でも品詞用法でもない。

近接遠方指示疑問不在不定特定任意同種一般
fesqoscespasdusziskosrisves
fitqutcitpetdatzatkutratmet
falqelcalpildolzelkelrel
場所fêdqôdcêdpâddûdzîdkôdrîd
修飾fikqukcikpekdakzakkukrak

意味が同じものは最初の 1 文字が共通なので、 例えば fes, fit, fal, fêd, fik を総称して 「f 系代詞」 と呼ぶことがある。 また、 1 文字目の文字で示すのではなく、 意味を示して 「近接の代詞」 とも呼ぶ。

人, 物, 事, 場所を表す代詞は全て名詞としてしか使えず、 修飾を表す代詞はすべて形容詞としか使えない。

近接の代詞と遠方の代詞は、 それぞれ筆者から距離が近いもしくは遠いものを指す。 この距離は物理的な距離であることもあれば、 心理的な距離であることもある。 英語の he, she のように男女の区別はない。

指示の代詞は、 それ以前までの文脈で出てきたものと全く同じものを指す。 日本語の 「それ」 や 「そこ」 などに相当する。

疑問の代詞については第 28 節で、 不在の代詞については第 24 節で、 それぞれ述べた通りである。

不定の代詞は、 何かに特定はしないがそれ全般を指す。 例えば zas は誰というように特定はしないが人全般を表す。 他の語に修飾されて漠然と 「人」 や 「物」 などを表すことがほとんどである。

特定の代詞は、 あるものに特定はするが具体的にそれが何であるかには言及しないときに用いる。 このとき、 使った人本人がそれが何を指すか具体的に知っている必要はなく、 指すものが 1 つに定まっていれば良い。

任意の代詞は、 どんなものであっても良いことを表す。 譲歩を表現するときに使われることが多い。

同種の代詞は、 物を表す met のみがあり、 文脈上で前に出てきた名詞を受ける。 ただし、 前の名詞が指すものと同じものを指すわけではなく、 同じ名詞で表現される別のものを指す。 英語の one や ones とほぼ同じである。

一般の代詞は、 人を表す ves のみが存在し、 一般論を述べるときに用いられる。 これはフランス語の on にある用法に似ている。

指示以外の代詞は、 同じ文脈で 2 回以上使われた場合、 別のものを指す。 例えば、 fes という代詞が 2 回使われたとき、 1 回目の fes と 2 回目の fes は異なる人を表す。

この文では、 殴った人と殴られた人は違う人である。 一方で、 2 回目の fesces に変えれば、 その ces は 1 回目の fes を指すことになるので、 自分で自分を殴ったことになる。

65間投詞

シャレイア語では、 間投詞は副詞とほぼ同じように扱われる。 すなわち、 動詞の直後や文末に置くことができ、 第 57 節で述べた挿入構文や第 58 節で述べた強調構文のような使い方もできる。 ただし、 どこに置いても前後にタデックを打つ必要がある点だけ、 副詞と異なる。

上の例で は動詞の直後なので、 もし が副詞ならばタデックは不要である。

口語表現

66縮約形の使用量の増加

口語では助詞句の縮約が多用される。 第 54 節で、 telces などの縮約は節の中で 2 回目以降に出てきたときに用いると説明したが、 口語では 1 回目からでも縮約形が用いられる。 なお、 口語だけに限らず歌詞や詩などリズムを重んじる文章でも、 リズムを保つために 1 回目から縮約されることがある。

67命令表現

第 34 節で述べたように、 命令を表現するには動詞 dit を用いるが、 口語ではこの動詞が省略され、 いきなり命令内容の動詞から文が始まることがある。 さらに、 命令対象が二人称の loc である場合、 'c に縮約されることが多い。

品詞詳説

68動詞型不定詞

第 14 節では、 動詞型不定詞が動詞, 名詞, 形容詞, 副詞の 4 つの品詞用法をとれることを説明した。 ただし、 これらの品詞用法には関係があり、 全く別のものを表すということはなく、 動詞用法の意味を基本として他の品詞用法で用いられたときの意味が決定される。 具体的には、 名詞用法は 「~すること」、 形容詞用法は 「~している状態の」 もしくは 「~されている状態の」、 副詞用法は 「~している状態で」 もしくは 「~されている状態で」 という意味になる。 形容詞用法と副詞用法において、 今述べた意味のうちどちらになるかは単語によって決まっている。

xôy という動詞を例に挙げてより具体的に説明する。 xôy が動詞形不定詞で、 動詞用法での意味は 「整理する」 である。 したがって、 名詞用法で用いれば 「整理すること」 という、 整理という行為そのものを指す。 また、 形容詞用法なら 「整理されている」 すなわち 「きれいな」 などという意味になる。 さらに、 副詞的用法なら 「整理された状態で」 の意味になる。

なお、 形容詞は 「~している状態で」 や 「~されている状態で」 という意味であるから、 その単語を経過相もしくは継続相で動詞用法として用いて限定表現にすれば、 形容詞とほぼ同じ意味を出せる。 ただし、 動詞を用いた文は一時的な状態を、 形容詞を用いた文は恒常的な性質を表すという点で、 多少ニュアンスは異なる。

Copyright © 2009‐2017 Ziphil, All rights reserved.
inserted by FC2 system